日本思想史新論 [書評]
日本思想史新論: プラグマティズムからナショナリズムへ (ちくま新書)
- 作者: 中野 剛志
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/02/06
- メディア: 新書
- TPPの是非で一躍時の人となった中野剛志氏。テレビのワイドショーでいきなり切れるなど「危ない男」という印象を持つ人が多いのではないか。TPPがらみで忙殺されていると思ったらこんな新書を出していた。これが意外に読み応えのあるのである。中野が取り上げた日本の思想家は四人。伊藤仁斎、荻生徂徠、会沢正志斎、そして福沢諭吉である。筆者にとってこの四人はバラバラの形の理解でつながっており、特に福沢に至っては会沢正志斎とは対極の地位にあるものとしていた。しかし中野がこの四人を「直列」につなげた場合にこの系譜がこれまでとは違った形で光を放ち始めるのである。ある意味、日本の保守主義の原型の系譜を照射してくれたのではと思うのである。
- 中野の専攻は経済ナショナリズムという。これまでナショナリズムは経済では否定的にとらえられてきた。新重商主義・新帝国主義のこの21世紀にあって日本は戦後のナショナリズム否定の思想史を越えていかねば埋没していく存在だということを改めて教えてくれた。ワイドショーでの振る舞いから某芥川賞作家と同様の視線で中野氏を見ていたが本質的な意味で日本の思想を変える「危ない男」といえそうだ。
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