現代語訳 福澤諭吉 幕末・維新論集 [書評]
- 作者: 福澤 諭吉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/03/05
- メディア: 単行本
先週中野剛志氏の著作を取りあげたが、同じ筑摩新書から福澤諭吉の幕末維新論集というものが現代語訳で出ているので読んでみた。これが面白いのである。同時代の西郷隆盛論が新鮮である。その行動や手法、功罪に関する福澤の指摘は、まるで現代の人物評を読むような錯覚に襲われる。キャプションの付け方がそうさせるのだが、読者は今の時代と重ね合わせて読み進めることができるのである。福澤は言う「西郷の罪は不学にあり」と。老練な術はあるが学識に乏しいとも。そして部下の腕力を押さえきれなかったと指摘する。今の政局の最中にある政治家を想起してしまう読者も多いかも知れない。此の書には西郷の他、勝海舟、榎本武揚といった明治になっても政治力を維持した幕臣を論評している。二人は福澤の論評当時は健在であり、であるからこそ時代の息吹を感じ取れる。それにしても時代を全く感じず、いや今こそアップトゥーデートなメッセージを受けるのは不思議だ。
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