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彼岸花 〜小津安二郎作品〜 2014年7月24日 [映画]

 小津安二郎の映画はどれも同じだ、出演者も、セリフも、音楽も演技も、カメラワークも。だから素晴らしい。筆者は実年世代になってから小津作品を見るようになったのだが、私小説を読むような、そしてある意味わかりやすいがオリジナリティのある演出で静かな気分で作品を味わうことが出来る。よきいわれることなのかもしれないがローポジでカメラ目線の役者の画角。セリフが自分に語りかけてくるようで、内面までひびく。田中絹子の目線とセリフが今回はそうであった。描かれている男達は1900年初頭に生まれ、少年時代を大正デモクラシーに育ち、壮年期で戦争を体験した。バーで、料亭でそうした男達の会話が描かれているが彼等それぞれの戦争体験はどうであったのだろうか、フィクションの世界だとしても想像したくなる。物心ついたときの家の風景、大人達の所作、街の看板、ネオン。どれもが懐かしい。彼岸花は昭和33年の作品。長島が入団した年。もはや戦後ではなく、かといって国民は豊かではない。小津の描いた男達は戦争を乗り越え、そして社会の中では成功を収めた人々の家庭の物語である。プチブルを描いていると理不尽な評論も受けたかも知れない。そうなのかもしれない。そうなのだろう。それがどうしたというのだ。この世代のこの層のある生活を抑制された演出とセリフと映像表現で描ききっている。大衆に媚びない作家性が、それでも大衆に受け入れられていた幸せな時代の宝石。それで十分なのである。
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