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『日本の叡知』佐藤優2012/09/12sおk [書評]

評論家佐藤優氏はテレビにほとんど出演しない。最近では田原総一朗氏のサンデープロジェクトくらいかもしれない。一方で彼は外務省職員時代から月刊誌にコラムを持っていた。岩波や扶桑出版といった左右の出版社にである。(サピオは当初筆名があったような記憶がある)その怪異風貌と社会主義国のキリスト教史といった日本では特異とされるジャンルの造詣の深さ(ここのところが岩波と産経に強いコネクションを持つところにも通じる)その両義性 で論壇で不思議な地位を占める。両義性というと彼は反論するかもしれない。両者の論理を知悉しなければ21世紀の新しい時代を読みとけないと。その立ち位置が生かされたのが青年期の外務省職員時代であり、その時期に彼はさらにその深度を増した。もっとも彼の著書を読むとどうやらそれは学生時代かららしい。大学の神学部に入り宗教学を学問として選びつつ、大学の学生寮に住み込み学生運動を行っていたという。学生時代からの左右の視点の振幅からしだいにチューニングされていった彼の世界像、国家像が読みやすい形で現されたのが「日本の叡知」である。中央公論で連載されている「新・帝国主義の時代」の論旨に沿った展開がされているのだと思う。冒頭から最後まで貫かれているのは日本には「物語が不足している」論だ。確かにその通り。今の日本人はプロジェクトXに代表されるように「過去の物語」に拘泥し、「新しい物語」を紡ぐ努力と勇気を持っていない。読者はいるが作家がいない状態。それが今の日本なのかもしれない。佐藤優氏は敵に回すと恐い男である。事実彼もそのように振る舞っている。 猫の主人公のコラムをオピニオン誌に彼は持っているが、そこでネチネチやられては相手はたまったものじゃないだろう。日本の将来のために佐藤優氏のような論者があと1人欲しい、しかも佐藤氏とガチで論争できるタイプの。両者の論理の振幅の中でこの国のビジョンのチューニングができたらと思うのだが。


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