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司馬史観への異議 2016年1月27日 [書評]

 最近SNSで坂本龍馬の活動資金源が政商グラバーだったという記事をが流布している。筆者は驚かない。しかし大河ドラマで「龍馬伝」をみさせられた人々には意外かもしれない。勤皇の志士たちが旧幕府勢力と戦い、手にした新体制。それが明治維新であり、その決定的役割を果たしたのが薩長同盟を取り付けた土佐藩脱藩の士、坂本龍馬。一般の理解はそうだ。そして戦後坂本像を確立させたのが司馬遼太郎である。
 『明治維新という過ち』(改訂増補版)原田伊織著。2015年1月15日初版の書が1年で18刷を数えた。著者はクリエイティブディレクター。この書もSNSで記事をよく見る。マーケティングを知悉している著者故なのかも知れぬ。原田氏は司馬氏の大学の後輩にあたる。サブタイトルにみられるように彼は吉田松陰と長州藩士をテロリストと見立てている。テロとの戦争にあけくれている現代からみると確かに彼等はテロリストである。かつてNHKの歴史番組で赤穂浪士が現代ではどのような罪に問われるのかを検証したユニークな番組があった。同様である。
 9.11以来「テロ」は平和の対極の思想の上に立った戦争犯罪となった。安重根も李奉昌も尹奉吉といった義士を顕彰する韓国もいずれ方向修正を余儀なくされるであろう。
 原田氏の著作は現代から見た明治維新の処断ともいえる。その意味では戦後のマルクス史観からの明治維新論と似た立ち位置かもしれぬ。司馬史観に囚われ、「明治維新のストーリー」を信じ込んでいた吾々に別の視点を与えてくれる。事実とストーリー。ノンフィクションでもドキュメンタリーでもややもするとストーリーが前提にあり事実をそれに都合良く付箋をはりつけて作品化する。そういう傾向がある。それがやらせを生む。「ドキュメンタリーにだまされるな」である。ちなみにネットは出版や放送から作られるこうした作品をメタ化してくれる。『明治維新という過ち』もネットで話題になっているのならなるほどと思う。 


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