アジアの教育熱の10年後を想定せよ [経済]
「ノートや文具がよく売れてるんだ」。単身赴任でアジアのある国で働いてる友人と会う機会があった。今ASEANの国々の子どもへの教育熱が高まっているという。レアアースの産出でプチバブルが起きているモンゴルもIT教育に力を入れている。アジアは教育、しかもIT教育こそが豊かな経済力と社会の建設、貧しさから脱して安心な生活を手に入れる手段と言うことを国家も国民も気づいた。その結果が具体的に出たのがノートや文具の消費量だというわけである。一方作者はある日本の教育学者からこんな話も聞いた「教育とGDPを安易に結びつけるのは疑問だ。日本の人口は1億1千万、世界の人口は70億。63分の1だ。世界のGDPの63分の1の豊かさで日本はいいのだ」。
世界のGDPの総額は6000兆ともいわれている。63で割れば 95兆円。今の日本のGDPはおよそ500兆円なので5分の1だ。年収500万の生活を100万円で生活せよということだ。
「豊かさを得るために教育に力を入れる国家と国民と教育と豊かさを混同するな、日本の経済力は今の5分の1でいい」という日本の教育学者。アジア経済の驚異的成長に背を向けるように失われた20年、そしてさらに失われていく日本。伸びゆくアジアとの差はこういうところにも表れている。これがあと10年続くとどうなるのだろうか。すでに日本の学生達の就職はアジアの学生と競い合い、学力もコミュニケーションも能力の低い日本の学生が優秀で学習意欲の高いアジアからの学生にはじかれているという現象が起きている。企業にとってアジア進出、特に政府の無策で生産拠点を国内から退去せざるを得ない製造業にとってアジアの学生の採用は生き残るための必須な戦略だ。この現象は益々拍車がかかるはずだ。10年後どうなっているのか。
筆者は日本の教育学者の言説を否定するつもりはない。だがその教育学者に問いたい。何のための教育なのかと。文部科学省の官僚(20代)が語ってくれたことがある。「エリート層、中間層、学習意欲の低い層、まんべんなくケアをしていくことが日本の教育の特長。特に中間層の学習向上力の高さが日本の科学技術力や豊かさを築いた」我々の作り上げた年金や生活保護、健康保険制度と行った社会保障制度も日本の豊かさを土台にしてなりたっている。それを失ってもいいのかと。ちなみにGDPで計算すると95兆円のGDP(名目)はイラクのレベルである。186カ国のうち真ん中の93位はカメルーンである。一人あたりの世界の平均GDPはジャマイカ程度である。計算が間違ってなければよいが。現在のASEANの国々のはるか下位であり、10年後はこれらの国々はさらに順位を上げているだろう。イラクやカメルーン、ジャマイカの豊かさをかつての一人あたりのGDP世界一位の生活や社会、世界からの待遇を知っている日本人は許容できるのだろうか。
時代は日本が富を失い貧と向かう過程だ2012/06/30 [経済]
経済の六重苦に喘ぐ日本。さらに電力飢饉が加わり原発停止は年5兆円の損失を生んでいるという。これまでの繰り返しになるので書かないが、一番の問題は我々が豊かさを失い貧しさに向かいつつあることへの国民の認識の甘さだ。その認識の甘さが民主党政権の無策を野放しにしている。もの作りの優位性を説く報道は数多見られるが、恒久的に続く電力不足を見越して企業は国内工場を次々と閉鎖している。失われた雇用は介護や医療と言った税金がファイナンスする市場に流れるだけ。それがさらなる消費税増率につながる。あらゆるベクトルの流れが日本を貧困へと結びつけているように思える。筆者の唯一の希望の光は日本の経済水域の中での資源の発掘の成果だ。資源国家として生き残る。発想の大転換が必要だ。
貿易赤字はシェールガス革命で解消?2012/06/20 [経済]
6月の台風は各地に爪痕を残して去った。常套の表現がテレビから流れている。今日は暑くなりそうだ。昨夏日本に来たシンガポールの若者が日本の夏はシンガポールより暑くて不快だと話した。外は30度以上のシンガポールは室内は20度くらいなんだという。夏の涼しさが豊かさの象徴と実感であり、最大のホスピタリティなんだそうだ。そういうえば上海から来た女性も日本の夜は暗いといっていた。中国は夜の夜景で豊かさを実感するそうだ。
日本がエネルギー危機であり、ジャパンプレミアムといった高額な化石燃料を買わされ、 固定価格買い取り制度で電力料金は上昇、韓国の3倍以上の電力料金となっている。日本を製造拠点にすることはそれだけで企業は大きなハンディを背負う。空洞化は雇用の喪失をもたらす。化石燃料にエネルギーの90%依存する日本は貿易赤字が恒常化しようとしている。
ところが日本と逆に貿易赤字を一気に縮小させる方向に経済が向かいだした国がある。シェールガス革命のアメリカだ。かつて双子の赤字と称され、貿易赤字の累積を危惧されたこの国が世界最大の資源大国を生かして、これを解消しようという流れだ。日本はこの意味を多角的にそして深く分析すべきだろう。中東の政治バランス(中国の関与増大)やアメリカの製造業の復活はこのブログで記したとおりだが、GDP世界一位の国がエネルギー輸出世界一位になることの意味をもっと考えるべきだろう。これまで日本などに米国債を買わせて資金を流入させていたアメリカがその必要が低減するということもあろう。ハイブリッドカーや電気自動車売れ行きはどうなるか。CO2排出量の規制の方向。エネルギーのパラダイムシフトが劇的に変わりつつある。米ソ冷戦構造の崩壊やグローバリズムの波、インターネット革命、で日本は世界の動きについて行けず、衰退に向かっている。アメリカの主導するエネルギー革命の波にどう対応するか。日本の将来がかかっている。だが日本はこの動きに背を向けているように思える。
佐渡沖油田調査2012/06/19 [経済]
世界のシェールガス革命、日本は?2012/05/18 [経済]
アメリカのシェールガス革命が世界に広がっている。ドイツやオーストリア、ポーランドですでに掘削や調査が始まっているという。中国には30兆立方メートルのシェールガスが埋蔵されていることがわかっており、オバマ大統領は中国に掘削技術を供与することを言明している。近い将来、先進国がエネルギーを自前でまかなうことが可能、もしくは自給率を飛躍的に高める可能性が高まってきた。これまでの先進国から産油国への富の流れが止まるか、減っていくことが予想されるのだ。サウジアラビアが原発に関心をみせるのもこうした実情に影響されているからかもしれない。中東の安全保障への影響も大きいだろう。
世界のエネルギー事情が大変動しているのに日本は対応ができていない。いやむしろ最悪な対応を重ねているとしか思えない。先進国がエネルギー自給率を高める施策や開発を行っているのとは逆行するように、日本は化石燃料への対外依存率を高め、国富がどんどん流失している。エネルギー自給率を高めることは製造業の商品コストを下げ、価格競争力を強化できることも意味する。かつてはエコノミックアニマルと呼ばれた日本は今は経済音痴の国民と国家になったようである。筆者は日本が復興するのは資源国家の道を目指すことだと主張しているが、日本以外の先進国のいくつかがその重要性に気付き、そして目指しているようだ。
中国の地位を脅かす工場の「無人化革命」日経4/242012/05/04 [経済]
4月24日の日経でアメリカの製造業をデジタル化し、価格競争力を強化しようとしているとの記事を読んだ。筆者はこのブログでオバマのメー・ドイン・アメリカ政策に注意すべきであり、TPPもアメリカ中小企業の製造業強化の観点が必要だと説いてきた。法人税下げ、シェールガス革命、通貨安政策。オバマが採用し、支援している政策がこの「新産業革命」に連関していることは自明だ。iPhoneに象徴されるように日本の家電産業はアメリカの製品設計、課金システム、そして中国の世界工場に壊滅の危機を迎えている。
「無人化革命」。アメリカはこの台頭する中国をも無力化させようという狙いがある。中国の人件費の値上がりは急速に進んでいる。製造コストは2015年にアメリカに近づくというレポートもある。無人化にするためのロボットやデジタル技術、印刷技術の開発が今後急速に進むだろう。今北京で米中戦略・経済対話が行われているが、水面下は攻防だ。
雇用も変わる。製造業が雇用の受け皿たり得なくなるわけで、政府の雇用政策は根本的に考え直さねばなる。
企業が7重苦で海外に逃げ出す空洞化。しかしその企業が戻っても(不可逆的ともいわれる)雇用は戻ってこないとしたら。。。。製造業ではない、そして税金にファイナンスされない雇用創造が急務だ。しかし驚くくらいに無策で無能で無知だ。それが誰なのか説明する必要はないだろう。
インドの貿易赤字2012/05/03 [経済]
渋谷再開発・男が消費するものを創造せよ~ヒカリエに思う~2012/04/29 [経済]
話題のヒカリエに行ってみた。90年代以降若者の街となった渋谷だがこの街の沈滞は若者の街となった90年代に始まる。理由は若者が「金を持っていない」からだが、2000年を越えて嫌消費性向がさらに高まり、沈滞に拍車がかかった。HMV、タワーレコードなど巨大レコード販売店が開業し音楽の街としての名を高らしめたが、ituneで音楽を買う時代となった。一方六本木や銀座、品川が再開発に乗りだし相対的に渋谷の地位を落とした。手をこまねいていたわけではない。マークシティなど道玄坂方向の再開発が行われ、IT企業の集積地との様相も得たのであるが消費客がそれで戻ってきたわけではない。やはり駅を中心とする再開発がかつての大人の消費者を取り戻す最後の砦だったわけである。というわけで先週ヒカリエに行ってみた。30代から40代の女性をターゲットにした店が並び、デパ地下は小ぎれいな展示。小生のような中年は素通りしたい環境と雰囲気に満ちていた。
「女性客を狙え」。長年に渡ってビジネス戦略の中で使われてきた概念だ。家庭で財布を握り、社会進出し、自分磨きに金をかける。。。。そこを狙えば外すことはない。俗にいう鉄板狙いなわけだが、すべてが鉄板狙いになった場合はどうなんだろうか。テレビがつまらなくなった、車が売れなくなったのと同様のベクトルに向かっているとしか思えないのだ。 女性の消費動向という温泉の源泉を無数の給湯管が差し込まれている状態。それよりもむしろ男の消費をかきたてる区画を作るべきではないか?荒野に野いちごを求めなければこの街の再開発の成功は限定的になってしまう。そう思うのである。
原油価格の高騰~日本のメディアではなく海外のメディアにあたれ~2012/04/05 [経済]
ガソリン価格が7週連続で上がり、ここに来てテレビも特集で取りあげ始めた。タクシーや運送会社に低燃費の走り方を教えて貰うと行ったもので、値上がりの背景にあるイラン危機には触れていない。復興需要の足を引っ張りそうなリスクだというのに報道の仕方が表面的だ。イランとアメリカ、イスラエルの関係が去年末あたりから緊張を増しているのに。日本のメディアは事態が出来しないと何もしないし、一旦出来するとヒステリーのように現象のみを追う。政治同様、レベルが低いのは国民の程度が低いからだ。隣の韓国はウォン安でサムスンや現代が潤っているが輸入費が嵩み、そのことで富が国外に流れ出しているという指摘もある。その大きな要因が原油高だ。
日本のメディアがおざなりな報道とは対照的に海外のメディアはこの問題を正面から取りあげ、深い考察も添えている。Oil priceでGoogle NEWSで検索すれば世界の一流紙から地方紙まで原由価格についての記事が読める。アメリカは外交防衛政策と投機の2点からのみた記事が多い。微妙な動きをみせるロシアの記事も興味深い。それぞれの内容は自国の立ち位置を知悉した記事が多いのは当然だ。日本の場合、原発再稼働、夏の電力危機、空洞化と言った視点から論じる記事が多くあるべきなのだが、然ういう記事は少ない。原由価格高騰とそれぞれの問題に補助線を引いて考察すべきだと思うのだが、なぜできないのだろうか。政治の劣化以上にこの国のメディアの劣化は深刻なのかもしれない。
家電復活~メードイン・アメリカの姿~2012/04/03 [経済]
ケンタッキー州ルイビル。GEの家電工場が600人の新規採用に乗り出した。660億円を投じラインを新設するのだ。増産するのは冷蔵庫。長く不振だった白物家電の出荷が持ち直しているというのだ。
アメリカの家電は60年代から80年代に輸出ラッシュをかけた日本メーカーに淘汰された。GEの冷蔵庫は今でも古い日本人にとってアメリカ的豊かさの象徴だ。世界的な競争力はかつての勢いはない。ここに来て多額の投資でラインを新設するGE。背景は筆者のような情弱にはわからない。推測でしかいえないが、オバマ政権の製造業ルネサンス政策とリンクした動きなのかもしれない。TPPを睨んだ通貨安、新エネルギー、法人税下げの政策はアメリカの製造業とそれにつながる中小企業のコストカットを生み、輸出競争力とイノベーション力の強化を導く。それがまたオバマ氏が咽から手が出るほど望む雇用を産む。TPPはアメリカの農業、金融、医療の進出だけではない、こうした製造業の輸出力強化によってこれまでの赤字国債と金融テクノロジーによるマネーの引き込み政策からの転換をはかろうというものなのだ。日本はこれまでの日米貿易交渉の流れから農業、金融、医療といった分野に目を奪われているが、アメリカの製造業復活の狙いにも視野に入れた交渉をすべきだ。シナジー関係をどう取結ぶかが試金石となろう。
家電ニッポンの終焉~日本企業のテレビから退場はあるのか~2012/03/29 [経済]
本日日経の社説では「蘇生力が問われる電機業界」と称して急激な構造変化を始めた電機業界について論じている。シャープが台湾の鴻海精密工業グループから10パーセントの受け入れを発表した。6年前売り上げが同じだった両者は今は鴻海がシャープの売り上げの5倍となった。昨日市場は好感しシャープ株はストップ高となった。2社の提携強化の背景にはアップル社の「iTV」がある。アップルが進出するスマートテレビを受注生産する基盤を作ろうという戦略だ。日本が得意としてきた「もの作り」しかしこのもの作りが最近、「もの」を考えることと「作る」ことの分離が進んでいる。前者の代表がアップルであり、既存の技術や部品を革新的な発想で商品を考える。それを受注して「作る」のがアジアを中心としたコストの安い家電産業。日本の家電業界はこの「もの作り」の分離の間の溝に落ち込んでしまった。そういう構図が透けて見える。シャープは鴻海と提携することで「作り」に徹する。こういう経営判断を奥田隆司次期社長は行ったのだろう。「モノを考えること」をやめ、マーケティングをやめる。もの作りの上部構造はアップルに依存し、今ある技術力を使ってアジアのコストパフォーマンスのある企業の工場で製品を作る。家電業界の中での帝国主義再編の中で窮地に追い詰められた日本企業のひとつの延命策といえる。もちろん日経社説はまだある可能性について言及している。円環330兆円の市場のうち、液晶テレビはわずか10兆円。27兆円のエネルギー関連機器、20兆円の医療機器の市場がある。ここにはアップルはまだいない。日本企業が「ものを考え作る」川上から川下まで一貫して主導権を握れる市場がまだ残っているというのだ。アップルのビジネスモデルはBtoCのみで有効という指摘もあろう。ところでアップルはテレビのあとは何を創造するのであろうか。自動車と教育と筆者は推察する。しばらくはカテゴリーキラーとしてのアップルの動向がもの作り日本の将来を左右する状態は続きそうだ。
蘇るメードインUSA~日経~ [経済]
日経の企画記事「蘇るメードインUSA」。日本の「ものつくりの」生産拠点が海外に移転し、「ものつなぎ」である物流の拠点も同様になりつつある今、この企画は日本経済に示唆に富む内容といえる。金融への過度の依存への反省とイノベーションの源泉もの作りを鍛え直す。そのために①エネルギーの自給率アップ②労働コストの低下③現場を支える人材の育成が重要だとしている。②は賃金・法人税の低減、ドル安政策をも含めて価格競争力の向上という意味だろう。
「先週アフリカにいたがどこへ行っても中国政府関係者がいた。彼らは常に『オールイン』だ。」GEのジェフ・イメルド会長は企業や政府の関係者に熱っぽく語る。「オールイン」。「全員参加」の重要性を繰り返し強調する裏には新興市場で官民一体で自国の製品やサービスを売り込む中国やドイツ勢などとの競争激化があると日経は指摘する。この産業界の危機感を「官」も共有しているのだという。産業界を後押しするように「FTA」「TPP」「中国を念頭に置いた『不公正貿易の是正』に積極姿勢を示す。
こうした「オールイン」はある意味21世紀の重商主義といってもいいだろう。アメリカやドイツはもちろんアジアの国々も輸出倍増こそが国の生き残る道だと覚悟し10年後20年後の国家像を見据えて懸命である。ひるがえって日本。経産相と経団連会長との不和が報道されている。産業界の警鐘に政府は反応せず、危機感を共有してくれない。高田創が名付けた「ソブリンワールドカップ」。日本は一次予選を通過したかにみえる。だが現状のままでは2次予選で早々に敗退するだろう。これまでの日本経済の成功体験から抜けきれずにいるのは経済界ではなく政府だ。